私はいかにしてイコサカードを作ったか

この文章は「Trick-taking games Advent Calendar 2017」の12月20日の

記事として書かれたものです。

--------------------------------------------------------------------------------

私はいかにしてイコサカードを作ったか

草場 純

今日20日を選んだのは、20に相応しい話があるからだ。 

私がペンタルとデカペンタルという二つの変形トランプを考えたのは、今から40年前である。ペンタルはスートを一つ増やし、5スート13ランク65枚の拡張トランプ、デカペンタルはランクを2つ増やし、4スート15ランク60枚の拡張トランプであった。デカペンタルでは各スートの2の下に1(Aではない)、その下に0というカードを作った。 

スートを1つないし二つ増やすというアイディアは容易に思いつくものと思われる。事実その後ソネット(テノス)が出たし、今は見かけないがカノンという5スートトランプもあった。そもそもウンスンカルタは、5スート15ランクで300年の歴史がある。タロットだって厳密ではないが5スートと言えないこともない。また新作のカードゲームはトランプとの差異化を図るため、ランクを増やしたり(減らしたり)したものが多数見出される。新作ではないが6人用ファイヴハンドレッドのカードには10とJの間に、11,12,13というカードがある。今回のゲームマーケットでもスートを増やした陰陽五行カードを見かけた。従ってこれ自身は少しも新規なアイディアではないにもかかわらず、汎用カードとして定着したものはあまりない。これはなぜだろうか。 

ソネットの作者は福井さんという方だが、私はどのくらいテストプレーしたか福井さんに尋ねてみたことがある。驚いたことに数ゲームと言う。そして使う人にルールを考案してほしいと言うのである。これは気持ちはとてもよく分かるが、残念ながらデザイナーはプレイヤーのために存在しているのであって、その逆ではないので、これはまあうまくいかないことが多い。ペアズはまだ頑張っている方であるが。 

私が拡張トランプを作った主目的は、これでブリッジをやってみることである。1979年にアイディアを発表した媒体も、ブリッジ連盟の会報への連載「フェアリーブリッジ」であったのは、その証拠だ。 

「作った」と今書いたが、出版したわけでもなんでもなく、ただ手書きで数セット作ってみただけである。当時はもちろんスリーブもないから、切りっぱなしの紙カードそのものだ。その代りそれでブリッジを何度もやってみた。やってみてしみじみ感じたのは、少なくともトリックテイキングゲームでは4スートがよいということだ。5スートブリッジでは2を抜いて一人12枚ずつ配ったが、これだと切り札は全体の五分の一。切り札を選ぶ効果よりもハイカードを配られる効果の方が強く、技術の出しようがなくなる傾向にあった。一方デカペンタルだと一人15枚となり、この方がずっと面白い。 

トランプのスートが4つというのは長い歴史の洗礼を受けた、完成されたものだったのだ。私は花札も6スート(この場合は6デュプリケーション略してデュプリと言う)を作ってみたが、通常の花札の4デュプリだと取れる相手が3通りだが6デュプリだと5通りに増え、取れない状況が起こりにくく面白くないことが確かめられた。麻雀は4デュプリだが、やはり4人だとこれが良い。ただあまり知られていないことだが、麻雀は3人だと3デュプリ、5人だと5デュプリで楽しく遊べる。ブリッジの場合も4人で遊ぶときは4スート13ランクが最適値だったのである。 

ではもっと大人数ではどうだろうか。6人ブリッジ(一人置きの3人が組むトリオ戦)を、ペンタルやデカペンタルでやってみた。ペンタルだとジョーカーを1枚加えても一人11枚。しかし5スートなので技術的でない上に、手札11枚は味気なかった。デカペンタルだと手札10枚で、ますます手札は厳しいが、ペンタルよりむしろみんなからの評価はよかった。 

ここで逆に考えてみよう。6人で遊んでも4スートで手札13枚のカードがあれば面白くなりそうだ。6人に13枚ずつ配るので、78枚。4で割ると、1スート19.5枚となる。

を20枚にして、を19枚にすればいい。そこで78枚のカードを作り6人ブリッジをやってみたらとても面白い。ルールは4人に準ずる。つまりディーラーから時計回りにコールし、ビッドの後ダブル、ダブルの後リダブルがかけられる。(直後でなくてもよいが敵のコールに対してとなる。) ビッドのあとパスが5人続いたらコントラクトが成立し、コントラクトに決まったスートをトリオで最初にビッドした人がディクレアラーで、その左隣がオープニングリードをする。するとその左隣が手を開いて第一ダミーとなり、ディクレアラーの指示でプレーする。次に次の人がプレーし、第二ダミーが手を開く。というようにプレーしていくわけだ。 

これは面白い、このカードを作ろう、ということになった。  

まず手作りで78枚のトランプを作り、6人ブリッジを試してみた。その結果、充分楽しめることが確認された。もちろんビディングシステムは謎だが、いろいろ試してみている。 

面白いのでいよいよ萬印堂に頼んでカードを作ろうと言うことになった。スートはもちろんで問題ない。ランクだが7つも増やす必要がある。何を増やすか。デカペンタルの1と0と-1は、よさそうだ。タロットの絵札を真似て、QとJの間にC(カバロ)を入れることにした。あとはファイヴハンドレッドを真似て13,12,11を加える。そうして

とだけ最弱の-1を加えれば78枚だ。スートシンボルを13,12,11はその個数描く、Aはスペード以外もスペードのように大きくし、1スペードもスペード以外のように小さくしカードの中央に描く。0はカードの中央を空欄にし、マイナスは点線で描く。絵札は前に出したタロットを流用すればよいだろう。その後、

とも-1まで作って、6人ブリッジの時だけ抜くようにした方が汎用性があるよ。」という意見を頂き、4スート20ランク80枚のカードをデザイナーに発注中である。来年の5月5日、6日のゲームマーケットには50個ぐらい販売できるだろう。 

さて、カードの名前だが、20ランクなので「イコサ」と決めた。イコサは、5のペンタ、10のデカのように、ギリシア語の20である。ランクを再度書くと 

A,K,Q,C,J,13,12,11,10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,0,-1 

となる。 

幸いなことに、黒宮さんがTTPの応募作として「獅子と狛犬」というゲームを作ってくれた。これは全く偶然だが、イコサカードにピッタリなゲームだ。ご厚意により、既に使用許可もいただいている。ほかにも多人数ジグもイコサカード向きだ。もちろんトランプゲームの多人数バージョンがいろいろできるが、それらは通常ダブルパック(トランプ2組)でもできるのが普通だ。しかし、ここに挙げた「6人ブリッジ」「多人数ジグ」「獅子と狛犬」は、イコサカードでないとできない。6人ブリッジのシステムにしても、Aを5点、Kを4点、Qを3点、Cを2点、Jを1点、13以下を0点とすると、全部で60点、一人平均10点なので、13点でオープンなどという4人ブリッジのシステムが、そのまま平行移動して使えそうであり、その構築も楽しみである。 

ほかにもこうした「イコサゲーム」をいくつか選定して、カードに付録して売ろうかなあと考えている。 

単純な思いつきのようではあるが、スート4つランク20というのは、長年のテストプレーの賜物と思っている。