直訳集

これから、用語抽出のために、『双六手引抄』の解説文の直訳を羅列していきます。

これを明治になって出された『新撰双六独稽古』に付せられた用語集と比較することで、

江戸時代の前半と後半(あるいは明治期)の双六用語の違いを見て取ることができるだろう、という目論みです。 

なおここで「直訳」と呼んでいるのは、原文を常体仮名に直したあと、句読点を補い、

濁点・半濁点を付け、直せる仮名は漢字に直したものです。漢字は全て新漢字を使用します。

句読点や濁点を補うにも、意味の咀嚼が必要ですから、仮名遣いこそ古いままですが、

結局は私の解釈の入った「翻訳」であることを、予めお断りしておきます。

双六手引抄の解説の直訳 前半(№1~18) 

№1 初手に重二は引くがよし。四六、一六、四一、重一に得あり。 

№2 遅れは、六先を合はぬものなり。 

№3 何一をば、引いて割ってかけよ。かように打たざれば、敵の高目のとき負けるなり。賽悪くて、下りて当たりたりとも、おり向かうべし。 

№4 五六、重六をば、さして前を割りてかけべし。 

№5 重五、五二、五三をば、六地をあけべし。かやうすれば二地の端、当たらぬなり。よく心ゑべし。 

№6 片一をば、二地の石を割りて一地の端をかけよ。片一とかきておろさせ、勝つことあるべし。敵二と六と出たらば、もとの義なり。 

№7 重三をば割りて入るべし。四六をば寄り入るべし。走りぬれば敵高目の時、我片六をうたざれば負くる也。賽悪ろくして当たらば、我も下り向かうべし。 

№8 四三、五三、重三、重四、重五なら、切れ端二つ引くべし。何六ならば、切れ端に引きて三地の石を六と入べし。とかく二つ端になるやうにすべし。 

№9 五三するべし。作りぬれば、目は一目空きなれどもふた端に当たるなり。すりぬれは二目空けどもひと端に当たるなり。 

№10 重四、五四、重五をば、六地をさがるべし。敵に片六と 打たすれば、四地の端を取られぬなり。 これのみならず、かやうのこと多くあるべし。 

№11 一二をば切るべからず。五地の石を入るべし。二つ入は 敵が二つさしてのち、我が片五を打ちては 悪しきゆへに、一二を三つと入べし。 

№12 四三、重四にはむねをあけて五地六地にをけば、一地の端を取られぬなり。かやうのことはおほくあるべし。 

№13 四六をば、ふた端に引きかかるべし。何六ならば、引きて四地の石を入るべし。とかく端に引くがよし。 

№14 四二、三二、重二をば、六地の石の上を作るべし。かけて四地に合ひぬれば、敵の四六、重六、五六にて負くるなり。但し敵の前かようになくば、かけて合うべし。 

№15 一六ならば六と引きとめて、むねを五地にさがるべし。重六のきおひとなる也。二六、三六、五六、四六、五一、五二、五三、重四 などにも よきなり。 

№16 何五をば二つ引き、何六ならば端引きて入るべし。敵の一六、重一を思ふべからず。かやうに打たざれば、敵端を合ひてのち、端を出しとられ負くる也。 

№17 五一、四一をばむねを割りてかけ、六地の石をさがるべし。片六とかけば五地の端、当たらず。四一に入、五一にかけては、かきめなきなり。 

№18 重一をば、さして五六とかくべし 。重二をもさして五六、重四とかくべし。何てうをもさして六地をのくべし。 

双六手引抄の解説の直訳 後半(№19~36) 

№19 五二、五四、重五をば、ふた端に引くべし。 

№20 五二をば入れて六地の石をさがるべし。かやうに打たざれは敵おりてのち、一二を打てばする目なく、二六、五三に端をとられて負くるなり。 

№21 五一をば、一を寄りてむねを一地にさがるべし。勝ちの定まる手なり。 

№22 五一、四二をば、三地へ走るべし。四地、五地つかふては敵の石をおいに、我重一を打つ時、三地にて重ぢをすりぬれは、三六と打たされて負くるなり。 

№23 四一、五一をば、引きてむねの石にて切りかけてよし。 

№24 何目にても 五地をつかふべし 五地つかはすれば三ぢをつかふべし。かたきよくふまへたるところを六と出す手なり。 

№25 五三、五二、五四、何にても 二つ端に引くべし。何六ならば?つ引入べし。 

№26 一二、重二をばさがるべし。四一、五一はかけて六地の石をさがるへし。高目をば引き詰めよ。敵に引き詰められては負くる也。 

№27 四一、三二をば寄るべし。三一をば五地の端をかけてその石をさがるべし。 

№28 何目にても引き詰めよ。一六は廿とうに有かなきなり。端の目かやうに打たざれば、のち内へ打たれて大事也。 

№29 五六をば、六を引きて五を 一地へ合ふべし。むねを合ひぬれば、敵に一二、三一を打たるれば、二端になる也。 

№30 一二、重一をば四つの端にする也。五三をば、三をさして五をさがるべし。重五をも引きてさがるべし。 

№31 重三、四二、五一をば引き詰めよ。一二、三一、四一をば、かけて六地の石をさがるべし。八つならば引きてかけよ。二三をも引き詰めよ。 

№32 二六、三六をば一地の石を走れ。二つ入りては重六の遅れとなる也。 

№33 黒一地の石、取る手あり。分別あるべし。 

№34 五四、五三をば二つ引くべし。さい悪ろくして端を当てたらば、二地の端を取りて勝つ也。 

№35 何にても引くがよし。四の二、四六と乱るる賽あり。 

№36 三六には切りて、外の石を合はするなり。