雙六手引抄まとめ

以上で掲載36局面をすべてを常体仮名に直した。冒頭に述べたように、続けて前書きに取りかかるが、

残念ながら前書きはよくあるアショカ王創造伝説だとか、盤の大きさのいわれだとかで、我々の求めるルールに関する情報は少ない。 

そこで、ここでルールについて判明したことをまとめておこう。 

①初手が先手がダイスを2つ振って始めることが確かめられた。 

②初期配置は現在のバックギャモンと同じ(大和配置ではなく本双六配置)である。 

③ぞろ目2度ムーヴ(4度ではなく)は一貫しており、ルールとしての影響力は大きい。 

④ベアリングオフがあった。「入り勝ち」「蒸し勝ち」の概念は全くない。 

⑤ギャモン勝ち(2倍勝ち)のようなルールはない。これは既に分かっていたことではあるが、今回戦略を調べてみて、その影響力の大きさを再確認した。 

まとめると①の影響は小さいので、次の様に言える。 

結論:少なくとも17世紀後半の大阪周辺で行われていた盤双六のルールは、「上がりとぞろ目の2倍ルールを無くしたバックギャモン」である。 

次にその評価だが、クニツィアはぞろ目ルールのない盤双六の方が理に適っていると言ったが、スピード感やスリルはぞろ目ルールのある方がやはり大きいだろう。

ぞろ目がないと平板な攻防になり、大逆転は起こりにくい。その評価は両用だが、個人的にはバックギャモンの方が面白いと思う。とは言え、

盤双六のルールしか知らなかった近世日本人にとって、盤双六は十分に面白いゲームであったであろう。 

こうしたルールは、双六書、双六譜、双六手引書(ただし初期配置には疑問が残る)、双六口授などにも共通しているので、

少なくとも江戸時代前半までのルールは上記のようなものであったろう。つまり聖武天皇も平清盛もベアリングオフをしていたと私は推察する。

[コメント]

M:ぞろ目はばらして使えるんでしたっけ。あと、ギャモン勝ちの定義は何でしたっけ。 

草:ぞろ目は2回ムーヴというほかはバックギャモンと同じです。例えばバックギャモンで33を振ったら、

ルールに違反しない限り3を自由な組み合わせで4回使いますが、盤双六で朱三(33)を振ったら、

3を自由な組み合わせで2回使います。使える限り使うのが義務なのは、どちらも同じです。

延宝時代の盤双六には、「ギャモン勝ち」に当たるようなルールはありません。

M:上りのルールをなくした、とはどういう意味ですか? ギャモン勝ちをなくした、というのはわかりやすいのですが。

また、蒸し勝ち、入り勝ちはなんでしたっけ。忘れてしまって・・・

草:これは私の書き方が悪いですね。「上がりとぞろ目の2倍ルールをなくした」というのは、「上がり2倍ルール(つまりギャモン勝ち)と、

ぞろ目2倍ルール(つまりぞろ目で4回動かす)」をなくした という事です。 

言い換えると、現代のバックギャモンから、ぞろ目を振ったら2倍動かせる(つまり4回ムーヴ)のルールと、

2倍勝ちルール(つまりギャモン勝ち)を無くしたものが、江戸時代前半の盤双六だったということです。 

「入り勝ち」とは自分の15個の駒を全て内陣(インナーボード)に入れたら勝ちといルールです。 

「蒸し勝ち」とは、相手をオンザバーにしてインナーを完全にシャットアウトした勝ち方で、雙六禁錦嚢抄とその我々の読みが正しければ、

ギャモン勝ちのような2倍の勝ちになります。つまり「蒸し勝ち」と「ギャモン勝ち」は、よく似ているけど微妙に違います。 

私の現在の推定では、江戸時代後半に「入り勝ち」ルールと「蒸し勝ち」ルールができ、明治になるころには「蒸し勝ち2倍」ルールが忘れられたのだと、

考えています。つまり、ルールは少なくとも2度変わったわけです。

M:しかし、1pなど、ローポイントにお互いすべて寄ったベアオフは絶対に逆転しないわけで、それは全然面白くないですよね。

というか、投了になりますね。そういうルールだったのかなあ。

草:私はそのように思います。つまり盤双六の終盤は逆転がないので、かなり早い時期に投了したのでしょう。

そこが拡大解釈されて、先にインナーに入れきったら勝ち(入り勝ち)とされたのだと思います。

しかし、恐らく「入り勝ち」は現代的な意味でのルールでなく、恐らく「相手がインナーに入れきったら投了するのが原則」という意味なのだと思います。

つまり明確な逆転の目があれば投了は取りやめて続けられるということで、雙六錦嚢抄にはそういう図 (インナーに全て入れても続けるととれる図) もあります。 

この「入り勝ち」を厳密な意味のルールととると、現在の白河のルールのようにあまり面白くなくなってしまいます。

しかしそこに「蒸し勝ち」ルールを入れると、別の面白さが生まれるというのが、ブレーヤーとしての私の見解です。