私はいかにしてフェアリーギャモンを作ったか

私はいかにしてフェアリーギャモンを作ったか 

(第一回)

私は子供の頃から変則ルールが好きで、いろいろ考案してきた。 

フェアリーチェス、フェアリー将棋、フェアリー囲碁、フェアリー連珠、フェアリーリバーシ(オセロ)、フェアリーチェッカーなど、二人用完全情報アブストラクトボードゲームのフェアリー(変則ルール)を一巡したところで、カードゲームへと守備範囲を広げた。 

まず、フェアリー麻雀、そしてフェアリーブリッジである。フェアリーブリッジは、1979~80年の二年間、ブリッジ連盟の会報に連載した。その次に手がけたのが、フェアリーバックギャモンである。 

およそ、フェアリーにするには、ロジカルでタイトなルールがよい。ギャモンは初期配置などはかなり恣意性がある(とは言え、現在用いられているのはほぼ一種類に限られる)が、ルールは論理的で隙がない。こういうゲームはフェアリーを作り易いのである。そしてフェアリーを作るコツは、以前にも書いたような気がするが、「ルールの一点だけを変える」というものである。 

ルールの重要な一箇所だけを変えて、後は全て元ゲームと同じにする。それでゲームとして成立しない場合は、必要最小限の変更を加える。 

私がフェアリーギャモンを創ったのは、1986年のことだったと思う。 

まず、第一に決めたのは、初期位置は極力変えないということである。従って第二に、駒の数も15×2=30個に、ほぼ自動的に決まる。 

第三に、ボードの形も変えないのを原則とした。 

第四にダイスもなるべく変えないことにした。これは「なるべく」であるので、変更に含みを持たせたが、変える場合にも、できるだけ小さい変更にとどめることにした。 

第五に人数も二人とした。これは四人用のギャモンなどが既にあるからである。 

最初に考えたのは、例によってミゼール(逆形)である。即ち、遅く上がった方が勝ちのバックギャモンである。しかし遅く上がった方の勝ちの双六なら可能だが、振り出しに戻ることのしばしばあるバックギャモンでは、簡単には実現できない。従って後回しになった。同方向に回るルールも思いついたが、これも成立を危ぶんだ。 

そこで、前妻(当時は離婚・同居だった)とプレーをしながら考案した。最初に試したのは、ヘルプギャモンであった。 

ヘルプギャモンは、チェスのヘルプメイト、将棋の馬鹿詰めから着想を得たが、双方協力するのではゲームにならない。そこで、相手の駒を動かせるルールとした。ではどうやって? 

私はダイスを混色で3つ振る方法を思いついた。白のプレーヤーは、白白黒のダイス、黒のプレーヤーは、黒黒白のダイスを振るのである。ただしオープニングだけは互いに自分のダイスを1個振って、普通に始める。そこで、白が動かしたら、次からは黒が黒黒白のダイスを振って動かし、次は白が白白黒の三個を振るというように進める。 

例えば白が白6・白1・黒3と振ったとしよう。白は白の駒を6・1と動かし、次に黒の駒を3と動かすようにした。相手のを後にしたのは、「まず相手のブロットを作り、すぐヒットする。」というプレーをされると終わらないと思ったからである。(自由な順番で動かせるルールをセルフギャモンと名づけ、後に試してみたら案の定、終わらなかった。) 

ゲームが終わるかどうかを「終息性」と言い、終息性の悪いゲームはダラダラと続きすぎてよくないものが多い。特にたくさん遊ぶことの望みにくいフェアリーゲームは、終息性を高くすべきである。 

このルールをヘルプギャモンと名づけた。これはフェアリーギャモンの最初の傑作となった。 

次に考案したのは、トリプレットである。 

これは同色のダイスを三つ使い、三つとも自分の駒を動かす。オープニングは互いに一個ずつ振って大きい目を出した方が動かすが、その後は3個ずつ振るのである。 

これで問題はぞろ目である。普通のギャモンだと、例えば5・5を振ったら、5を四回動かす。ではトリプレットで5・5・5が出たら、どうすべきか。当然5を六回動かすべきだろう。では、3・5・5の場合は、3とあと5を何回動かすべきか。私はこれを「ダブレット」と呼び、三回と決めた。目と動かし方を例示しよう。 

名称 実際の目 動かす目 

シンプレット 256 256 

ダブレット 335 3335 

トリプレット 444 444444 

このルールは、終息性は高くて気楽にプレーできて良いのだが、少々あっけない。だがダイナミックで、それなりに楽しめた。 

 

(第二回)

ダイス三つを使うところから、次に考えたのは、「セレクトダイス」である。これは、三つのダイスを振り、そのうち二つを選んでムーヴするというルールだ。(オープニングだけはやはり1個ずつ振りあう。) 

これは、互いに良い目が出やすいということだ。だから逆に冒険はしにくい。プライミングゲームになりがちである。選ぼうと思えば4割はぞろ目なので、すれ違えば進行は早く、スピーディーなゲームと言える。 

このルールは、中級者が初級者に勝ちやすいかも知れない。良い目をきちんと使えるのが中級者で、悪い目に最善な対応ができるのが上級者と考えれば、であるが。だから逆に言えば中級者以上は、やっぱりダイス運のゲームになるとも言える。 

これを改作して、後にN雲君が「セレクテッドダイス」を考案した。やはりダイスを三つ振って、相手がそのうち二つを選び、選ばれた目で自分が動かすというルールだ。互いに悪い目を振り合うわけで、こちらの方が面白いのだが、時間はずっとかかる。悪い目を判断するのは良い目を判断するより難しいし、当然ムーヴも難しくなる。すれ違ったあとも、互いになかなか進まない目が出ることになる。動けない目も増えるだろう。ぞろ目も、ひたすら避ければ36回に1回しか出ない。どれをとっても時間のかかる要素である。 

こちらは、上の定義に従えば、上級者が中級者に勝ちやすいゲームと言えよう。私は一度だけ試してみたが、確かに面白いがとても時間はかかった。 

双六は二つ使うダイスの目が6までなので、すご「六」と呼ばれるのだろう。しかし現代では六面ダイスばかりでなく、四面ダイス、八面ダイス、十二面ダイス、二十面ダイスは普通に市販されている。これらを用いてバックギャモンはできないだろうか。それは双四、双八、双十二、双二十であるが、この中で一番現実的なのは、双八(すごはち)に思える。そこで八面ダイスを2個ずつ用意して、双八をやってみた。 

ここで問題になるのはインナーの扱いで、8ポイントまでをインナーとすると話は簡単である。しかし私は「それでボードの対称性が失われる」と感じて6ポイントまでをインナーとした。8ポイントに駒があって8を振っても上がれないのであるが、それではあんまりなので、「ムーヴが終わったときインナーにしか駒がなければ上がれる」とした。悪いルールではないが、分かりにくいので現在では8ポイントまでをインナーと考えている。 

さて、ゲームとしてはどうか。結論から言うなら、あっけないゲームになる。フルプライムは作れないし、セミプライムもすぐ壊れる。8ゾロは32ピップ進めるのだから、トリプレットルールの6トリプレット36には及ばないものの、かなり大きい。もっともぞろ目の確率も六分の一から八分の一に減るが。 

一方、特定の目の絡む確率も減る。双六で例えば1の絡む確率は30%ほどだが、双八では24%ほどになってしまう。つまり特定の目が期待しにくく、出にくいということである。 

しかし、フェアリー味というなかなか意味では面白い。6プラを8で越えるような展開は、ダイナミックで爽快である。 

こうした現象から、後の5倍理論(バックギャモンの駒の数はダイスの最大目の5倍がよい)が生まれてきたのだろうと推測する。 

(第三回)

八面ダイスを使うことで可能になったのが、マイナスギャモンである。これは八面ダイスの1~6の目はそのまま1~6として使い、7は-1として、8は-2として扱うというもので、傑作フェアリーギャモンの一つと思っている。 

双八と同じように、特定の目は若干出にくくなるし、ぞろ目の確率も六分の一でなく八分の一になるのだから、ダイスの出目による運の型よりは小さくなり、その分実力の出やすいゲームとなる。 

普通のバックギャモンの1ロール辺りの平均ピップ数は8.5弱と言われているが、双八では10強である。当然双八の方が早くゲームが終わる。一方マイナスギャモンの1ロール当たりの平均ピップ数は5.25となり、かなり遅いのが見て取れる。即ちマイナスギャモンは試合時間が長いのである。実際には双八にはフルプライムが存在しないのに対し、マイナスギャモンのプライムは堅固で、なかなか崩れない。またマイナスの目ではエンターできないので、ピップ数差以上にマイナスギャモンは時間がかかる。 

たがフェアリー味は、マイナスギャモンは抜群である。まず駒が後ろへ動くという感覚がなんとも言えない。すれ違ってもじりじりと後ろから近寄ってきて、後ろから打たれる。一度崩れたプライムが修復したりもする。あと「居食い」などというワザもある。1・-1が出たら、ポイントから隣のブロットを打って戻ってくるなどという技が発揮できる。あたかも自分の駒は動かさずに、ヒットだけしたように見えるわけだ。 

なおルール上の補足だが、いくらマイナスの目でも、アウターボードの後ろからバーの上にバックして上るというようなことはできない。また、一度上がった駒が、マイナスの目でインナーに引き戻されるというようなこともない。 

次にクロックワイズギャモンについて述べよう。 

これは時計回りという名のように、敵も味方も時計回りに進むのである。初期配置は、互いに線対称ではなく、点対称の位置になる。 

図示しよう。 

普通のバックギャモンの初期配置 

黒のインナー 

○▼▽▼▽●||▽●▽▼▽○ 

○ ●   ●   ○ 

●  ●   ○ 

● ○ 

● ○ 

○ ● 

○ ● 

○ ○ ● 

● ○  ○   ● 

●△▲△▲○||▲○▲△▲● 

白のインナー 

白は時計回りだが、黒は反時計回りに回る。 

クロックワイズギャモンの初期配置 

黒のアウター 

○▼▽▼●▼||●▼▽▼▽○ 

○ ● ● ○ 

● ● ○ 

● ○ 

● ○ 

● ○  

● ○  

● ○ ○  

● ○ ○ ● 

●△▲△▲○||▲○▲△▲● 

白のインナー 

クロックワイズギャモンも、マイナスギャモンとまた違った意味で、後ろから打たれるものだ。後ろから追いかけてきて打つのである。シャットアウトが殆ど不可能のこのゲームの戦略は、私にはよく分からない。みんなよく分からないので気楽にできるが、ひょっとして最も戦略的に難しいゲームなのかも知れない。

(第4回)

次の相手の振る目を、予め見ることができたらどうだろう。 

そこで、プレシュートギャモンを考えた。手続きが面倒なので、例を使い、順序だてて説明しよう。 

①二人でダイスを1個ずつ振った。貴方が4、相手が2としよう。 

②そうしたら、貴方は自分のもう一方のダイスの2を上に向けて4の隣に置く。貴方のボードには、貴方のダイスの4-2が置かれていることになる。 

③そうしたら、相手に相手のダイスを二つとも振ってもらう。例えば5-3が出たとしよう。その5-3の目をそのままにしておく。 

④次に貴方は貴方の駒を4-2の目に従って動かす。(もちろん相手の5-3を考慮しつつムーヴする。) 

⑤そうしたら、貴方は自分のダイスを二つとも拾って振り出す。 

⑥相手はその貴方の目を見て、5-3で自分の駒を動かす。 

⑦そうしたら相手がまたダイスを振る。 

・・・・ 

お分かりだろうか。普通のギャモンは、ダイスを振ってから動かすが、プレシュートギャモンでは、動かしてからダイスを振る。 

ダブルは、自分のムーヴの後、ダイスを振る前にかける。 

これはなかなか高度なゲームになる。相手の次の目はわかっているのだから、絶対打たれないスロットなどが可能だ。しかし、次の自分の目をコントロールできるわけでないので、やりたい放題とはいかない。 

ヒットされると、ピンポイントでポイントを作られるので、かなり辛い。結局次の目はわかってもその次の目はわからないので、普通のギャモンと本質的には変わらない。しかし、技術の要素は普通より高い。 

ところで、バックギャモンの現代ルールでは、オープニングロールでは、互いに一個ずつ振って大きい目を出した方が動かす。 

これを最後までやってみたらどうだろうか。つまり毎回一個ずつのダイスを振って、大きい方が両方の目を動かすのである。相手より大きい目を振り続ければ、自分ばかり進めることになる。 

問題はダブレット(ぞろ目)だが、二人が同じ目を振ったら、前回動かさなかった方が動かすことにする。 

これをオープニングギャモンと名づけた。 

オープニングギャモンは、フェアリー味はある。ランニングで絶対負けていたのが、あれよあれよと言う間に逆転したりする。技術の要素も、自分がムーヴするときは、次に自分のぞろ目はなく、相手にだけぞろ目の可能性があるので、その辺りを考慮する必要がある。 

毎回二人で振るのがうっとうしければ、一人が混色のダイスを振って、大きい目が出たダイスの色のプレーヤーが、駒を進めればよい。これを交互に振ってもかまわないだろう。 

ここらで、ミゼールを完成させたいと思った。 

ミゼールは、互いに相手に打たせるようにすると、永遠に終わらなくなる。そこでヒットされたら上がらされてしまうというルールを考案した。これで、遅く上がった方が勝ち、とするのだ。 

これはゲームにはなるが、あまりにもあっさり終わってしまう。そこで、打たれたら一番前、即ち1ポイントに置くとした。普通そこには打った人のバックマンがあるから、そのように置けない場合は2ポイントに置くとした。 

これをバックギャモンの逆で、フロントギャモンと名づけた。 

やってみるとこれでもあっさり終わる。自分のバックマンを打たれると、ピップカウントを一気に減らされてしまうので、スプリットしないで進めるのがコツだ。 

しかし、ベアリングオフ(あがり)のとき、いかに非能率的に上がるか、と考えるので、フェアリー味がちょっと出る。クロスバーを避けるテクニックなども必要だ。だが所詮ダイス運のゲームではある。 

(第5回)

さて、フェアリーギャモンは私が殆どを考えたのだが、いくつかは違うものがある。ハーフギャモン、ラージギャモン、セレクテッドダイス(解説済み)は、N雲君の考案になる。このうちハーフギャモンだけを大会には採用している。これはフェアリーギャモンの一番の傑作だと、私は考えている。 

白イン 白アウト 

|●▽○||▽▼●| 

|● ○|| ●| 

| ○|| ●| 

| || | 

| ●|| ○| 

|○ ●|| ○| 

|○▲●||▲△○| 

黒イン 黒アウト 

上図はハーフギャモンの初期配置で、図の左側が上がりである。プレーヤーは三面ダイス(普通の六面ダイスに、1~3の目を、二度ずつ刻んだもの)を二個振って駒を進める。(もちろんオープニングに限っては、互いにダイスを一個振って、大きい方のプレーヤーが今出た二つのダイスの目を動かす。) 

ダイスも半分ならボードも半分、駒も15個のおよそ半分の8個を用いる。あとは普通のバックギャモンと、殆ど同じである。三回に一回はぞろ目が出る。 

このゲームは、ミニチュアとは言え、ちゃんとランニングゲームや、ブロックゲーム、プライミングゲームからアタッキングゲーム、そしてバックゲームまであって、勝負の味は少しも損なわれていない。

一方、ちゃんとしたフェアリー味もあり、普通のバックギャモンを早回しの映画で見ているような、面白い展開になる。 

最後は二度振りギャモンで、これは一度振ってムーヴ、もう一度振ってムーヴと二度やってから、相手の手番になるものである。もちろん相手も二回やる。 

これで、大会で競技されるフェアリールールは、一通り紹介した。バックギャモンを知っていれば、難しいところはない。後は実戦で確かめて欲しい。

(第6回)

前回までで、現在大会の正式種目になっているルールの概要と誕生について触れた。今回は補遺としてその他のルールについて触れ、次回にゲームの放散について言及して、このシリーズを閉じたい。 

まずサイズの問題がある。現在最も新しく正式種目に加えられたのが、マイクロギャモンである。(正式種目としてまだ確定はしていないが、時間をとらないので正式に採用することになりそうである。)

ダイスは二面賽を二個振る。二面賽などと言うと初耳のように思われるかもしれないが、回り将棋(振り将棋)で振る4枚の「金」が二面賽である。あれは二面賽を四個使うゲームであり、韓国/朝鮮のユンノリというゲームで使う「ユッ」も同様である。 

白イン 白アウト 

|●○||▼●| 

| ○|| ●| 

| || | 

| ●|| ○| 

|○●||△○| 

黒イン 黒アウト 

オープニングロールは2-1しかありえない。これでもゲームになるというところがすごい。 

ではサイズについてまとめてみよう。 

名称 ダイス 盤の大きさ 駒の数 ぞろ目確率 特定のぞろ目 

マイクロギャモン 2面賽 8ポイント 5枚ずつ 2分の1 4分の1 

ハーフギャモン 3面賽 12ポイント 8枚ずつ 3分の1 9分の1 

セミショートギャモン 4面賽 16ポイント 10枚ずつ 4分の1 16分の1 

ショートギャモン 5面賽 20ポイント 13枚ずつ 5分の1 25分の1 

バックギャモン 6面賽 24ポイント 15枚ずつ 6分の1 36分の1 

ロングギャモン 7面賽 28ポイント 18枚ずつ 7分の1 49分の1 

ラージギャモン 8面賽 32ポイント 20枚ずつ 8分の1 64分の1 

グランドギャモン 9面賽 36ポイント 23枚ずつ 9分の1 81分の1 

スーパーギャモン 10面賽 40ポイント 25枚ずつ 10分の1 100分の1 

ウルトラギャモン 11面賽 44ポイント 28枚ずつ 11分の1 121分の1 

マンモスギャモン 12面賽 48ポイント 30枚ずつ 12分の1 144分の1 

ほかに単六(シンプレット)とか単三というルールがある。単六は私の創作ではないが、ダイスを2個でなく1個だけ使うというルールだ。しかし時間がかかりすぎるので、「ハーフギャモンで3面ダイスを1個だけ使う」というルールに私が改作したのが単三で、電池の大きさではない。 

これが結構ゲームになるから面白い。 

他には、前述したセルフギャモン、セレクテッドダイスのほか、三度振りギャモン、ツーウェイギャモン、ダブルギャモン、16枚ギャモン、14枚ギャモンなどがある。それから古くからの串刺しなどのルールもあるが、ナックギャモンやキライは、私はフェアリーの範疇には入れていない。ただし、bluex2さん考案のパワーギャモンは、フェアリーと認めてよいと思う。 

多人数化は例があるし、高次元化はフェアリーのレベルを超えるので、考案していない。

(最終回)

バックギャモンを知る人はまだ少数派だろう。ましてやフェアリーギャモンでは、そもそも話が分かる人が少ないと思われる。その草創の話を書いても、意味はあまりないかも知れない。作った本人は面白いと思うのだが、ゲームを創作する人は、押しなべて「自分のゲームは面白い」と思うものであることを、私はよく知っている。 

今年のフェアリーギャモン大会は参加者は七人であった。「昔こういう変なことをした人がいた」程度でも人々の記憶に残れば嬉しいが、それもなかなか覚束ないかも知れない。 

だが、ゲームが文化を相対化するように、フェアリーはゲームを相対化する。20年を越えるフェアリーゲームの歴史を振り返って、気がついたことを二、三述べても、無駄とばかりは言えまい。 

最初に思うのは、アイディアの放散ということである。 

現在12種目のフェアリーゲームを大会でやっている。そのうち11種は私の考案で、1種だけN雲さんの考案である。そして私は9種類を20年余り前に、ほぼ一度に考えたのである。 

別にそれで自慢しようというのではない。そうではなくて、私が思うのは、例のカンブリア爆発である。

カンブリア爆発は、今から5億7千万年ほど前の浅い海中で、多数の動物の門ができた事件である。動物の門は、それ以来増えず、それ以前には少ししかなかった。即ち地球は46億年あまりの歴史のなかで、ただ一度、それも性急に動物界の門を大量生産したのである。 

フェアリーギャモンとそれを結びつけるのは、あまりにも飛躍かも知れないが、時間の縮尺を変えれば、両者は同じ構造だと言ってもそう乱暴ではないと思う。フェアリーギャモンの放散を考えれば、カンブリア紀の放散にもヒントが得られるかも知れないのだ。 

私が思うには、放散の原因は生成メカニズムの発見によるのである。 

フェアリーギャモンは、「バックギャモンにフェアリー手法を適用する」と着想したとたんに、ごく短い時間で次々に完成形を作ることができた。フェアリー手法とは、ミゼール(負けるのを目的とするゲーム)、多人数化、少人数化、ボードの拡大、縮小、立体化、多次元化、インディアン(自分の情報は自分で見ない)、用具の制限/過剰などである。 

するとカンブリア紀の動物に起こったことも、ある種の多様化メカニズムの応用であったかも知れない。それは遺伝子の重複かも知れないし、石灰質の固定であるかも知れない、目の発明かも知れないし、体節構造の発見かも知れない。いや、きっとそうした事々をもたらす、隠れたメカニズムの全体なのではないか。そのメカニズムは一度稼動しだすと、行き着くところまで行って止まるのだろう。これが放散の正体なのである。(かな?) 

このようなことは、創作活動や、創発活動につきものなのかも知れない。 

例えば、モーツァルトやヴィヴァルディは、湧き出すように作曲したと言うし、手塚治虫なども短時間にオリジナルな発想を次々に紡ぎだした。我々はこうしたものに対し、「天才だ」と決め付けて終わってしまう。しかし創作の内面に立ち入れば、決して無から作ったわけではなく、彼らなりの創作のコツと言うのか、メカニズムと言うのか、着想法があったのではないかという気がする。 

それさえ分かれば私もモーツァルトに成れるとは、もちろん思わない。しかしこうした創作の鍵は、それぞれの分野で、役立つもののようにも思える。 

私がフェアリーギャモンを通じて思い至ったもう一つのことは、フェアリーを通じてゲームの本質に至れる可能性がある、ということである。 

例えば「バックギャモンの駒はなぜ30枚か」というのがある。これは、6の5倍だからが答えだ。(この場合の駒の数は、敵味方合わせた総数なので、一方の駒だけなら2.5倍ということになる。) 

テーゼ:バックギャモンの駒の数は、ダイスの最大目の5倍がよい。 

これを発見したのは私ではなく、N雲さんなのだが、もしフェアリーギャモンなかりせば、発見されることはなかっただろう。 

[その理由は、プライムを作るにはダイスの最大目の2倍は必須である。それだけだと余裕がないので、あとダイスの目の半分くらいの余裕が欲しい。よって2.5倍、双方合わせれば5倍となる。] 

このことは、マイクロギャモンからマンモスギャモンまでの各ゲームによって、証明される。証明するのもまたフェアリーの力なのである。 

さてもう一点は、ゲームの上達のためには記録が必要だということだ。 

現在フェアリーギャモン大会は年に一度なので、ゲーム中にやっとコツを掴んでも、一年たつうちにはすっかり忘れてしまう。これがメモ程度でも前年のコツが記録してあれば、今年はその続きから出発できる。 

ここに私は文明の起源を見るのだが、いかがだろうか。 

以上の「教訓」を以って、このシリーズも終わりとしたい。

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私はいかにしてフェアリーギャモンを作ったか(全7回) 

第1回:ヘルプギャモン、トリプレット 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=702077615&owner_id=1296441 

第2回:セレクトダイス、セレクテッドダイス、双八 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=707572155&owner_id=1296441 

第3回:マイナスギャモン、クロックワイズギャモン 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=711370445&owner_id=1296441 

第4回:プレシュートギャモン、オープニングギャモン、フロントギャモン 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=719550325&owner_id=1296441 

第5回:ハーフギャモン、二度振りギャモン 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=721648902&owner_id=1296441 

第6回:マイクロギャモン~マンモスギャモン、単六、単三 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=725723916&owner_id=1296441 

第7回:フェアリーギャモンまとめ 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=729742264&owner_id=1296441 

(付録) 

パワーギャモン 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=241795293&owner_id=1296441 

バックギャモンの駒はなぜ30枚か 

http://www2.ocn.ne.jp/~kusaba/gamenoki/kiji/riron.htm