多次元トランプ
トランプには4つのスートと、13のランクがある。直積というのか、両者の組み合わせが全てしかも一つずつある〈長方形と呼ぶ〉ので、13×4=52枚で、これにスートにもランクにも属さない鬼札としてジョーカーが一枚〈か二枚〉ある。同じカードはないので、これをデュプリケーションが1つと呼ぶ。4つのスートは更に赤と黒に分かれ、13のランクは、絵札と数札に分かれる。
これだけの構成なのだが、実によくできていて殆どのカードゲームは「トランプでもできる」と言われてしまう。汎用ゲームカードなのである。これほど汎用なものは他にはあまりなく、ドミノも花札も特殊性を持っている。これが西欧近代と関係しているのかどうかは、私にはわからないが、ガリレオの生まれる百年ほど前に完成している。
スートを増やせば、5スートのカノントランブやペンタルやウンスンカルタ、陰陽道、6スートのソネットや天九牌〈三角形〉がある。タロットの大アルカナも5番目のスートと言えるかも知れない。7スートはドミノがそうだが、スートとランクが同じなので、三角形になる。
ランクを増やせば、14ランクのタロットの小アルカナ、15ランクのウンスンカルタなどがある。また、スペインやポルトガルのトランプは12ランク、イタリアは10ランク、ドイツでは9ランクや8ランクなどと、少ないのもある。
ラミィキューブは、4スート13ランクだが、全く同じ牌が2枚ずつある。これをデュプリケーションが2、略して2デュプリと呼ぶ。
ピノクルは、4スート6ランク2デュプリである。ベジークは、4スート8ランク2デュプリだ。
麻雀のスート・ランクは少し変則的だが、4スート9ランク4デュプリと言うことができる。
株札などは、ランクは12だがスートがなく、デュプリケーションだけ4ある。つまり1スート12ランク4デュプリである。
カリプソパックは、4スート13ランク4デュプリ。パンにいたっては、4スート10ランク8デュプリである。
普通の花札は12スート4ランクとも、4スート12ランクとも言える。
動物探しは、5スート5ランクがペア〈二種〉である。この二種と言うのは、2カップリングで、これを2カプルと表現する。すると百人一首は、100スート2ランクと言うより、100スート2カプルと言った方が実態に即すだろう。
カルタは、48スート2カプルだ。
ドメモのタイルは、1スート7ランクだが、それぞれのデュプリケーションが違う。三角形なのだ。こういう場合は総枚数をスート数で割って、平均デュプリを出せる。28÷7=4だから、平均4デュプリというわけだ。
さて、二次元、あるいは二次元半のカードを紹介したので、三次元のカードを紹介しよう。
山梨大学の有沢さんは、3スート3ランク3カプルのカードを考えた。3^3=27枚にジョーカーを1枚加え、28枚とし、使いやすくした。今手元に資料がないので、構成はよく分からないが、スペード・ハート・クラブ、123、ABCのようにすれば、
ス1A、ス2A、ス3A、 ハ1A、ハ2A、ハ3A、 ク1A、ク2A、ク3A
ス1B、ス2B、ス3B、ハ1B、ハ2B、ハ3B、ク1B、ク2B、ク3B
ス1C、ス2C、ス3C、ハ1C、ハ2C、ハ3C、ク1C、ク2C、ク3C
ジョーカー
という構成になる。ジョーカー以外を3組集めれば、3スート、3ランク、3カプリ、3デュプリの82枚のデッキができる。どんなゲームができるかはわからないが。
私も近いものを考えていた。クォークⅠである。
スートはカラーで、赤・緑・青の3スート、ランクはフレイバーでU(アップ)、D(ダウン)、S(ストレンジ)の3ランク、カプリは電荷で+・0・-の3カプリだ。電荷0のクォークがあるのかという突っ込みはなしね。
デュプリケーションを増やしてこれでゲームをすれば、素粒子の振る舞いをシミュレートできるかも知れない。
更に四次元のカードを考えた。4スート、4ランク、4カプリ、4第四ファクターだ。スートは赤黄緑青、ランクはUDSC、カプリは1234、第四ファクターはニュートリノとかスクウォークとか超対称性を使いたかったが、よく分からないので、スペード・ハート・ダイヤ・クラブ(笑)。これで256枚の四次元トランプ「クォークⅡ」ができる。作らなかったけど。(笑)
ともあれ、四次元トランプ「クォークⅡ」の構想だけはしてみた。
だが世の中は広くて、ちゃんと四次元カードは実在する。ただし、3スート、3ランク、3カプル、3第四ファクターと、3元なのだが。
そのカードとは、「セット」である。(スルースもかな?)
色・数・形・模様を4つのファクターにしたこのカードは、ちゃんとゲームになっている。ただし私は、このゲームは嫌いだ。