ドメモのメモ
なかよし村が始まった頃だから、1980年代の前半だったと思う。パズル懇話会で、芦ヶ原さんが
「こんなゲーム知ってる? ルールだけだけど、面白そうだよ。」
と、ルールのコピーをくれた。それが「ドメモ」である。
そのときの懇話会の会場では、私を含めて、聞いたことのある人すらいなかった。
B5一枚の簡単な説明だったが、なかなか面白そうだ。
道具は1~7のタイルが28枚だけ。これをプレーヤーに同枚数配って、規定枚数を伏せ、規定枚数を公開する。(その枚数は参加人数に依る。)
このゲームで面白いのは、「自分の手札は見ない」「自分の手札を人に見せる」というインディアン・ポーカー方式であることだ。ただし、このゲームは、運と張ったりのゲームではなく、きっちりとした推理ゲームになっている。
プレーヤーは自分の手札のタイルを外向きに立て、自分にだけ見えないようにする。そうして、手番になったら
「私は7を持っています。」
というように、自分の手札を当てるのである。当たれば、当たったタイルを表にしてもらえる。判定は自分以外のプレーヤーがする。ただし、ただし例えば「7」が複数あっても、表にするのは1回に1枚だけである。
こうして早く自分の手札を全て明らかにすることを、目的とする。他人の回答が、大いに参考になるのが、ミソである。
タイルは、1が1枚、2が2枚、というように数字と同じ枚数がある。当然7は7枚ある。
簡単なルールで面白く、アイディアが秀逸である。推理ゲームとしては、実に簡単なシステムで、アーカンソーブラフのバリエーションや、ククのバリエーション、そしてコヨーテなどでのみ成功しているインディアンシステムの、最も早い成功例である。
ついでに言えば、ドミノと、記憶の意のメモを掛けた命名も、面白い。尤もこれは後に「本物の」ドメモを手に入れたら、ドミノ型ではなく、正方形の板だった(ただし立つ)ので、少々がっかりしたのだが。
さて、ルールは分かったが、ゲームそのものがない。ルールのコピーには、「オットーマイヤー」と書いてあって、まだラベンスバーガーと名乗る前の作品らしい。なかよし村の初期のメンバーで、JAGAの創立にも関わった、収集家のO氏に言っても、
「僕も欲しいんですよ。」
と言うばかりで、当時は所有していなかった。(後に実物を手に入れた。しかも嬉しいことに私のためにも一つ、手に入れてくれた。)
しかし、ゲーム自体はドミノ2セットから自作できた。例えば、61、52、43、を2枚ずつと00を1枚、7とみなせばよいのだ。後になかよし村の例会でやったが、大変に好評だった。
このドメモをとても気に入ってくれたのが、後に百合丘でゲーム会を営むMさんだった。彼は器用で、ドミノに綺麗にシールを貼って、手製のドメモを作った。シールは数字によって色が違えてあり、逆さまにしても読めるようにうまく工夫したすぐれものであった。(例えば6なら、[69]のようになっている。ドメモには9はないので、間違う気遣いはない。)
これはとてもプレーがしやすく、後で手に入れた「本物」より出来がいいくらいだ。28枚なので、ピッタリ「ドミノ」の箱に収まるのもよい。今にして思えば、こちらこそ「ドメモ」の名に相応しいかも知れない。
ドメモは地味なゲームだが、簡単で面白く、システムが斬新でよいゲームである。そしてその普及の初期においては、ククや、ディクショナリー、市場の商人や、アベカエサル、投扇興や、ウンスンカルタ、八八やハグルのように、少しは私も役に立ったのかと思えば、大変に思い出深いゲームでもある。
一つ残念なのは、数年前に、芦ヶ原さんに、ドメモのルールを紹介してくれた経緯を尋ねたら、本人が全く覚えていなかったことだ。「そんなゲーム知らないなあ。」と言われて、がっかりするよりビックリしてしまった。
今回、古いパズル懇話会の会報を調べたが、記録は見つからなかった。既に芦ヶ原氏も鬼籍に入られた。日本におけるドメモの「起源」が、霧に包まれてしまったのは、残念である。
ドメモのドは、度忘れのドかも知れない。私の知る分だけでも、ここにメモしておく次第である。
関連サイト: DOMEMO~ドメモ~幻冬舎
GCF01014 草場 純 ドメモの紹介
93/12/30
ド メ モ 紹介
12月のJAGAの例会で、森田隆志氏に、彼の自作の「ドメモ」のセットを見せら
れた。ドメモはラベンスバーガーの古いゲームで、15年ぐらい前(この年代は当てに
なりません)、 外国のおもちゃの輸入小売をしているニキティキが、ちょっとだけ輸
入したことがあるという「幻の」ゲームである。10年ぐらい前ニキティキに問い合
わせたが、誰もドメモを知らず話にならなかった覚えがある。ラベンスバーガーで
ももう作っていないようである。
森田氏は、恐らく田中潤司氏、小田氏、梅林氏、すぎやま氏、田中邦雄氏、に次
ぐゲームコレクターで、特にカロムのようなアクション傾向のゲームに強い上、ル
ールの整理もきちんとしていてくれる有り難い人物である。
私はドメモを昔パズル作家の芦ヶ原氏に、「こんなゲーム知ってる?」とニキテ
ィキの手書きのルールのコピーを見せられて知った。ゲーム本体は誰も持っていな
いようである。自作して色々な人に教えた。森田氏もその一人である。難しいゲー
ムでも内容の深いゲームでもないが、システムとしてはあまり類を見ない、変わっ
たゲームである。ドメモという名称は、ドミノと記憶を意味するメモとの合成語で
あろう。神経衰弱みたいなところはあるが、記憶というより推理に頼るゲームであ
る。というわけで、ここに紹介する。
ドメモは28枚1組のドミノ型のタイルで構成されるカードゲームである。ドミノ
はタイルである必然性は薄く、形さえ1×2の長方形なら紙のカードでもかまわな
いが、ドメモはタイルである必然性がある。立てなければならないからである。尤
も、逆に長方形である必然性がない。正方形(正確にはそれでも直方体だが)でもか
まわない。
ドメモの28枚は、1が1枚、2が2枚、3が3枚、・・・・、6が6枚、7が7枚あ
る。2人から5人までできたと思うが、4人の場合を紹介する。28枚の札を裏返し
てよく混ぜ、一人5枚ずつ取る。この手札は見てはいけない。残りの札は4枚を表
にし、4枚を伏せておく。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
さて各自は自分の手札を立てるのだが、その際自分の方へ向けてはいけない!! つ
まり自分にはタイルの背を向けて、自分以外の3人が見えるように置くのである。
勿論どのプレーヤーにも自分の手札は見えず、代わりに自分以外の3人の手札と、
4枚の表になった札だけが見える。まるで、インディアンポーカーやインディアン
ククの雰囲気である。情報量はとても多い。見えないのは、自分の5枚と伏せられ
た4枚の併せて9枚だけで、残りの19枚は最初から見えている。
さて適当な方法で最初のプレーヤーを決める。次のディールでは、この最初のプ
レーヤーが左隣へ移る。つまりこのゲームは4ディールで1ゲームである。
最初のプレーヤーは19枚の見える札をよく検討して、次のように発言する。
「私は?を持っている。」 勿論?には、1~7の適当と思われる数字が入る。その宣
言に対し、彼の向かい側のプレーヤーは彼の手札に該当の数字があれば、1枚だけ
取り出して彼の前に表にして置いてやる。もし1枚もなければその旨発表する。ど
ちらにしろ次は左隣へ順番が移る。左隣の者も「私は?を持っている。」と言って向
かい側のプレーヤーに判定を仰ぐ。このようにして手札を早くなくした順に順位が
つく。
なお、あるプレーヤーが例えば、「私は3を持っている。」と言ったとき、彼の手札
に3が2枚以上あっても、向かい側のプレーヤーが取り出す3は1枚だけである。
だから、まだ3を持っている可能性はある。
このゲームは他人の発言がデータになる。1を持っていないプレーヤーが「私は
1を持っている。」と言ったら、1は伏せた札の中である。あるいはブラフであるが、
ブラフは1人に損害を与えるものの2人に利益を与えてしまうので、あまり得策で
はない。
このゲームの欠陥は道具を自作しなければならないという点である。森田氏は、
普通のドミノのセット28枚に厚手の数字シールを貼って作っている。大変具合いが
良い。普通のドミノのセットが2セットあれば、1を1枚、2を2枚・・・とセレクト
して簡単にできるが、モーパイ可能なのが欠点になる。
以上