雙六手引書 幷裁物覚
国会図書館貴重書室に『雙六手引書 幷裁物覚』という資料があり、申し込めばマイクロリーダーで閲覧でき、
複写も可能です。保存状態は悪く、汚損で読めない所もあります。簡単な前書きと後書きがありますが、刊記はなく成立年次も不明です。
司書に尋ねたのですが、由来や入手経路は不明で旧図書館から引き継いだものであるとのことでした。
内容は双六手引抄によく似ていますが、盤面の配列や解説の一部に異同があります。私は当初、両者の題名から、
この「雙六手引書」(以下「書」)が原本で延宝七年の「雙六手引抄」(以下「抄」)はその抄録と考えました。
しかし両者が手に入ってみると、どうも逆ではないかとの印象を持ちました。その理由を列記してみます。
①「抄」には年次が書かれているが、「書」にはない。
②「抄」は大きなしっかりした版だが、「書」は縮小して詰め込んだ記載になっている。
③「抄」には誤りが少ないが、「書」には誤植がある。
④「書」は「裁物覚え」という別ジャンルのパズルとオムニバスになっている。
⑤「抄」の前書きや口絵はしっかりしているが、「書」は簡略で口絵もない。
⑥「抄」の保存状態は良いが、「書」はよくない。
⑦「抄」は国書総目録に記載があるが、「書」は見えない。
特に⑦は決定的で、私は「書」は「抄」の重版あるいは類版と考えました。重版というと現代では喜ばしい話ですが、
江戸時代のそれは要するに海賊版で、犯罪でした。現在の私の判断も、基本的にはそれです。つまり「書」は1680年以降に作られた「抄」の類版であると。
しかし「書」を読み込んでいくと必ずしもそうとは言い切れない部分もあります。つまり「書」の方が「抄」より、詳しく筋が通って見えるところもあるのです。
もちろん後から作った方が詳しいということは、充分あることではありますが。
けれども、同じ盤面に違う解説が付けられていたり、盤面が微妙に違ったりは、ある意味よい資料と考えることもできます。
両者を引き比べれば、新たに見えてくるものもありそうです。
そこで以下に『雙六手引書』の図面と解説を順に常体仮名に直して掲載します。仮名遣いは原文のままにしますので、現代語訳と言うわけではありません。
変体仮名は全て常体仮名に直します。旧漢字はミクシィでは使いにくいので、新漢字とします。振り仮名のあるものは( ) で示します。
濁点を補ったり、促音を小さくしたりすることはしません。改行も含めて原文通りです。(ただし原文の縦書きは横書きになります。)
底本は、冒頭に述べたように国会図書館貴重書室にあるものです。短い前書きや後書きがありますが、それはこの連載の最後に掲載することとします。
また、ここではページ数(丁数)は省略します。冒頭の番号は私の整理番号です。掲載順にふりますが、1ページに6面ありますので、
原文とはかけ離れたものになっています。もちろん後半の「裁物覚」は省略します。