花札古ゲームをたずねて 

「花札古ゲームをたずねて」   (1995/01/29-2/19 FGAMEログより)

古い花札ゲームを紹介していきます。

古いと言っても大正時代ぐらいまでのものとします。

馬鹿花、横浜花(八八)は、もちろん大正時代にもありましたが、

みなさんご存じでしょうから、省略します。

題して「花札古ゲームをたずねて」

1.一二三

一二三は、「いちにさん」と発音して、基本は馬鹿花と同じである。

一二三では、出来役は、四光、青短、裏菅原の3つだけである。

出来役ができると「ヨロシイ」となって、勝負は打ち切りとなる。

その場合、四光なら他の二人より3銭ずつ、青短・裏菅原(赤短)の

ときは2銭ずつもらい、役が出来ないときは、最も点を取った者が

1銭ずつもらったので、一二三と呼んだという。

2.二四六

二四六は「にしろく」と読む。

これも一二三と同じようなゲームだが、役が出来ても終わらず、

最後までやって88点原点で計算し、浮いた者が2銭ずつもらう。

(一人浮きは、+2,-1,-1、一人沈みは+2,+2,-4)

そのほかに四光が出来れば他のプレーヤーから2銭ずつ4銭、

青短か裏菅原が出来れば他のプレーヤーから1銭ずつ2銭、

もらえる。結局もらえるのは、2銭か4銭か6銭なので、

二四六と言うそうな。

結局一二三も2銭4銭6銭もらうのだが、打ち切りかどうかが違う。

3.三六九

三六九は、「さぶろっく」と読み、別名「馬鹿七短」とも言う。

プレーヤーは三人(ミツ勝負)で、八八と似ている。

手役はなく、場は小場だけで、出下りもない。

出来役は四光(9銭ずつ)、七短(6銭ずつ)、赤短(3銭ずつ)、青短(3銭ずつ)

の4つだけである。出来役ができればそのディールは打ち切りだが、

できないときは、八八と同じ計算になる。これで1点が5厘程度

だったというから、できれば18銭の四光はたいしたものである。

4.千六十

別名「前橋花」。

光札は1枚20点(20×5)、種札は1枚10点(10×9)、短冊札は1枚5点

(5×10)、カス札は1枚10点(10×24)で、合計480点。馬鹿花をやって

親は150点原点、胴二は160点原点、ビキは170点原点、で計算をする。

ミツ勝負(3人ゲーム)で、小場のみ。出下りなし。手役も出来役もない。

点数を累計していって1060点以上になれば勝ち。

#「千六十」の説明訂正

4.千六十 の終了条件で、「点数を累計していって1060点以上になれば勝ち」と

ありますが、終了条件に二通り方式があるので、これは間違いではないけれど、

不正確でした。この点を補足します。

千六十は、原点計算(原点はプレーヤーのポジションによって異なる)

を累計していって、予め定めた回数(10回程度)を終えたところで、清算する方式と、

原点計算をせずに、ただ取った点数を累計していって、1060点を越えたら、

(ちょうど1060点でもよい)その時点での最高点者が勝つ、

という方式の二種類があります。

 

5.六短

これはサシ勝負(2人ゲーム)で、光札20点、種札10点、短冊札5点、

カス札1点でという、普通の八八の点数。

手八・場八で、普通の花札のルール。ただし点差は問題にならず、

1点でも勝っていたら相手から2銭もらえる。

出来役は、六短だけで、出来ればディール打ち切りで、3銭もらう。

サシで6枚は難しいと思われそうだが、雨は4枚とも短冊とみなすことになっている。

これだとけっこう出来る。短冊札が全部で13枚もあるのだから。

もちろん、柳に短冊も短冊として数える。

6.十枚

サシ勝負(二人ゲーム)である。

札の点は、カス札0点、短冊札5点、種札10点、光札30点である。

光札の点に注意。

手十場十、つまり手札10枚、場札10枚である。手役はなく、

手札がなくなったところで終わる。(最後は山札がないのでめくらない)

点数を計算し、相手より30点以上多く取れば勝ちになる。

差が30点に満たなければ、次のディールに入り、累計で30点以上になれば

終わる。場札8枚のバリエーションもある。

7.三束五十

三束は「さんぞく」と呼ぶ。一束とは百点のことである。

手役も出来役もないようである。ミツ勝負(三人ゲーム)で、札は

普通の花札である。カス札は0点、短冊札は10点、種札は50点、光札は100点

である。合計十束五十なので、一人三百五十点が原点となる。これが

三束五十の名の起こりである。

8.三十ツッパリ

これも三束五十と同様に、馬鹿花とほとんど同じルールである。

ただし、カス札は0点、短冊札は1枚1点、種札は1枚5点、

光札は、松に鶴・薄に満月・柳に小野東風が1枚5点、

桐に鳳凰・桜に花見幕が10点。原点は30点。

出来役は、青短と菅原(赤短)だけで、点は適当にその場で決めるとあるが、

上記の点の20点相当のようである。

ミツ勝負で、出来役ができても勝負は終わらない。

9.三束ツッパリ

三束ツッパリは、三十ツッパリと同じゲームである。

ただ単に、単位を10倍にして、総計900点、300点原点で呼称するにすぎない。

花札では100点が1束だから、「さんぞくツッパリ」と呼ぶだけである。

10.讃岐メクリ

サシ勝負(二人ゲーム)である。手八場八で、48枚の標準パックを

使用する。手役・出来役はない。普通の花札の合わせ方で親からプレーし

相手より40点多く取れば勝ちである。一度で40点リードできなければ、

勝った方が親を務めて続け、累計で40点リードしたら終了である。

千六十や他のゲームでもそうだが、このルールだとあっさり終わることもあるが、

延々と続くこともある。文献にないので分からないが、ある上限の回数があって、

それでも40点リードできなければ、リードしている方の勝ちとしたのではないだろうか? さて、この讃岐メクリの著しい特徴は、札の点である。

猪菊蝶と坊主の点がいいのである。こういうゲームはあまり類がないので、

嬉しくなる。

菊に盃・・・・・・9点

薄に満月・・・・8点 いわゆる坊主の札である。

萩に猪・・・・・・7点

牡丹に蝶・・・・6点

菖蒲に八橋・梅に鴬・紅葉に鹿・桐に鳳凰・桜に花見幕・松に鶴・藤に郭公・柳に小野が5点

短冊札全部が1点。桐の黄かす(赤桐)・薄に雁も1点。

上記以外は0点。合計82点。 なかなか面白そうでしょ?

11.一束行き

標準パック48枚を使ったサシ勝負(二人ゲーム)で、手八、場八である。

ルールは普通の花合わせと同じで、札の点も同じである。

ディール終了時に点を計算し、100点以上になれば勝ちである。

相手との差は無関係。サシなので、1回ではまず無理だろう。

以下は親を交替してプレーし、累計で100点以上になれば勝ちである。

プレーの途中であっても、勝利宣言をしていい。そこでゲームは打ち切る。

計算した結果100点に満たなければ負けである。

出来役は、「デッチョコ」というのがある。できれば相手から20点貰える。

これで100点以上になれば、役ができた瞬間に勝つということになる。

デッチョコは、手札に三本があって、全て自分で取った場合に成立する。

飛び込みと似ているが、一つ違うのは、三本を自分で捨てて、自分で取るのは、

禁止である、ということだそうだ。

補足説明。一束行きは寝ぼけ眼で書いたので、説明を追加しておきます。

一束行きというゲームには、出来役が1つだけあり、それはデッチョコと

いう名です。デッチョコは、出来役と言っても手役が前提になるもので、

その意味からも珍しいと思います。前提になる手役とは三本(スリーカード)で

三本があって、そのカードを4枚とも取れば、八八では「飛び込み」という

追加役になります。一束行きのデッチョコは、一種の飛び込みなのですが、

この八八の飛び込みより、条件が少し厳しくなっています。

例を挙げて説明しましょう。

私の手役に松の三本があったとしましょう。4枚目の松が出てくれれば、

それを取って「飛び込み」は完成です。しかし出そうになければ、

(山の下の方に沈んでいる、あるいは他のプレーヤーの手にあっても、様々な

理由で、それをすぐ取らない、など)自ら松のカスでも捨てて、一巡だれも

合わせなければ、自分で合わせてしまいます。これでほぼ飛び込みは

確定です(ビキなら完全に確定)。このテクニックをなかよし村では、

なぜか「一号機」と呼びます。ところが一号機ではデッチョコには

ならないのです。つまり自らの三本を崩すことなく飛び込んだ場合のみ、

デッチョコと認められるのです。最後の三枚の手札から松のカスを捨てるのは

悲しい。

7スタッドポーカーのスリーカードに比べて、手札8枚、総数48枚の三本は

かなり出来やすいです。しかしデッチョコは、確かに飛び込みより難しいです。

説明、分かりましたか? 不審な点は質問してくださいね。

12.ケコロ

ケコロは、普通の合わせ方をする八である。八はまだ時々本などにも

載っているし、関西ではまだ細々とプレーされているようなので、

この古ゲームをたずねてシリーズでは紹介しないが、実にユニークな

合わせ方をするゲームである。例えば松と松は合わず、

松は梅や萩や桐と合うというのだから傑作だ。

ケコロは、ルールは素倒し、役は八である。

サシ勝負で、八には3人バージョンもあるようだが、ケコロは

2人専用である。この点はミツ勝負の素倒しとも違う。

手八・場八である。札の点は以下のごとし。

(なお手役はない)

光札・種札は全て5点。短冊札は1点。かす札は8点。

うーん、現代の素倒しとは結構ちがいますね。

出来役は2つの例外を除いて全て長短2つずつあり、いずれも15点である。ただし

出入りだから、結局は30点と同じ価値がある。

まず名称だけあげよう。

霧島・グンダリ・御老中・三五六・五四六・七五三・熊野さん・

八島・中蔵・四七八・十七八・海老・下三・出雨

このうち四七八(しんしちはち)と、十七八だけは、短の役しかなく、

あとは全て長短両方がある。都合26。次回から詳しく説明しよう。

1)霧島 …桐に鳳凰・藤に郭公・梅に鴬

八の場合の霧島は、上記の梅に鴬のかわりに、柳に小野東風である。

2)短の霧島 …桐の黄カス・藤に短冊・梅に短冊

黄カス(赤桐)を短冊がわりに使うのは、八と同じである。

3)グンダリ …紅葉に鹿・梅に鴬・桐に鳳凰

4)短のグンダリ…紅葉に短冊・梅に短冊・桐に短冊

5)御老中 …菖蒲に八橋・牡丹に蝶・紅葉に鹿

6)短の御老中 …菖蒲に短冊・牡丹に短冊・紅葉に短冊

7)三五六 …桜に幔幕・菖蒲に八橋・牡丹に蝶

三五六はサンゴローと読む。

8)短の三五六 …桜に短冊・菖蒲に短冊・牡丹に短冊

9)五四六 …菖蒲に八橋・藤に郭公・牡丹に蝶

10)短の五四六 …菖蒲に短冊・藤に短冊・牡丹に短冊

11)七五三 …萩に猪・菖蒲に八橋・桜に幔幕

12)短の七五三 …萩に短冊・菖蒲に短冊・桜に短冊

13)熊野さん …菊に盃・柳に小野東風・桜に幔幕

14)短の熊野さん…菊に短冊・柳に短冊・桜に短冊

15)八島 …薄に満月・藤に郭公・梅に鴬

これも八とは、柳と梅の入れ替わりがある。

16)短の八島 …薄に雁・藤に短冊・梅に短冊

これは八と同じく、薄に雁を短冊がわりにしている。

17)仲蔵 …萩に猪・薄に満月・菊に盃

118)短の仲蔵 …萩に短冊・薄に雁・菊に短冊

19)四七八 …藤に短冊・萩に短冊・薄に雁

シンシチハチと読む。これと次のジューシチハチは短の役しかない。

20)十七八 …紅葉に短冊・萩に短冊・薄に雁

21)海老 …松に鶴・柳に小野東風・紅葉に鹿

これぞ、赤蔵の子孫ではないか!?!? これについては別項で。

22)短の海老 …松に短冊・柳に短冊・紅葉に短冊

23)下三 …松に鶴・柳に小野東風・桜に幔幕

シモザンと読み、めくりかるたの下三と、現代の赤短とのミッシングリングである。24)短の下三 …松に短冊・柳に短冊・桜に短冊

25)出雨 …萩に猪・薄に満月・柳に小野東風

26)短の出雨 …萩に短冊・薄に短冊・柳に短冊

13.七短

七短は六短と全く同じルールである。違うのは役が短冊6枚では

だめで、短冊7枚必要ということである。これだけで、相当できにくくなるが、

世の中には「これくらいでちょうどいい」という人もいるのである。

あなたは、どちら?

14.六百間

ろっぴゃくけんと読む。関西の一部でチャンガと呼ばれているのとほぼ

同じ六百間を、私は子供の頃父から教わった。柳に小野東風の札を

「飛びつき」と言って、何でも取れると教わったのが印象深かった。

母から、小野東風が蛙を見て云々という話を教わって、得心が行った覚えがある。

しかし、ここで紹介する六百間は、大正時代以前のルールで、かなり違っている。

サシ勝負である。手十場八である。(つまり手札10枚、場札8枚)

互いに手札を見てから、銭を賭ける。これは同額でなければならない。

額が折り合わないと流れになる。親を変えずに蒔き直す。

折り合えば、親から普通に合わせていく。出来役はなく、全部取り終われば、

取った札の点を計算して差額を紙に書き、掛け金の半分を得る。

(半端は余分に取って良い)残りの半分はプールしていく。

勝った方が親を務め、また配り、同じことを繰り返す。

このようにして、紙に書いた累計が600点以上になったら、

プールにたまった掛け金を総取りして終わる。

差の累計で、しかも次に述べるように基本点が小さいので、

相当に時間がかかると思われる。時間切れの場合はプールは折半したのか、

得点によってある比率で分けたのか、その辺は良く分からない。

札の点

松に鶴、梅に鴬(!)、桜に幔幕、薄に満月、桐に鳳凰 20点。

柳に小野東風(!)、藤に郭公、菖蒲に八橋、牡丹に蝶、萩に猪、菊に盃、

紅葉に鹿、柳に燕 10点

短冊札 どれも 10点

薄に雁 0点

かす札 どれも 0点

 

15.指込(さしこみ)

サシのギャンブルゲームである。初めに互いに同額の掛け金を出す。

親は札をよく切り混ぜて場に置き、ビキがのぞむ。親は上から3枚取り、ビキは

次の3枚を取る。親は手札から1枚を捨て、山から1枚を取る。

この交換はしなくてもよいが、するなら必ず1枚だけである。

次にビキが同様に1枚を交換する(しなくてもよい)。

交換した後、手札の月数を合計し、一の位が大きいほうが勝ちである。

つまりカブですね。札を交換する前と後にベットインターバルを設ければ、

ポーカーそのものですね。

勝ったプレーヤーが初めに出された掛け金を取る。

16.猪鹿蝶

これも同名のゲームが現在も行われているが、ルールは異なる。

これから紹介するのを、旧猪鹿蝶とした方がいいかも知れない。

これは、親一人に対し子が複数で戦うブラックジャック型の

ギャンブルゲームである。

親は一組(標準パック48枚)の花札を欲きり混ぜ、子の一人に望ませて

(カットさせて)から、ほぼ4等分して場に置く。場には10数枚程の

山が4つできることになる。子は任意の山に現金を賭ける。(張るという)

人数が多いと複数の山にはかけられないらしいが、一般にはどの山に

どう賭けてもよい。(4つ全部に賭けてもよい)

子が張り終わったら、親は、それぞれの山をひっくり返して一番下の

札を公開する。もしその中に、猪・鹿・蝶のいずれかの札が1枚でも

あれば、賭け金は総取りである。もしなければ、

それが光札なら5倍(4倍づけ)

それが種札なら3倍(2倍づけ)

それが短冊札なら2倍(1倍づけ)

それがカス札なら、賭け金没収

で、現金を支払う。

 

17.アヤメカツギ

これはミツ勝負で、カードは48枚の標準パックを使用する。

ルールはおおむね「花合わせ」(要するに馬鹿っ花)と同じで、

好みに応じて事前に役を決めておく。役ができても続行する。

違うのは札の点数で、スダオシをもっと過激にしたようなものである。すなわち

カス札・・・・・・・1枚30点

短冊札・・・・・・・1枚5点

その他の札・・・1枚10点

である。

長らく、続けて参りました「花札の古ゲームをたずねて」は、今回で

いったん中締めとさせていただきます。あとカブ系のゲームがいくつかありますが、

ギャンブルとしてはともかく、ゲームとしてはあまり面白いものではないので、

省略します。また、ここに書き込みましたのは、主として「第3類」の

ゲームです。第2類についてもいずれ書きたいと思っています。

それまでひとまず、さようなら。

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「花札ゲームの知られている度合い」 (1995/02/19 FGAMEログより)

識字率をもじって識戯率とでも呼べばよいのか、要するにポピュラリティーの

程度を考えてみたい。

とりあえず、花札ゲームをそのポピュラリティーから4つに分類してみた。

第1類 現在もよくプレーされているゲーム

花合わせ(馬鹿っ花)、コイコイ、八八、カブ

第2類 現在も細々と(と思われる)プレーされているゲーム

 すだおし、むし、八、ポカ、いすり、しょっしょ、ひよこ、てんしょ、

六百間、アトサキ、カブのバリエーション、きんご、(花札を使った)手本引き、

バッタまき、キッタまき、各種地方札のゲーム

第3類 現在はほとんど滅びたと思われるゲーム

一二三、二四六、以下このシリーズで紹介しました。外に 百落 など

第4類 現在名前しか知られていないゲーム

八雲、こざら、ざらちゃん、どさり、狸、てぐさり、善し悪し、四五六

など

めくりかるたや、よみかるたは第3類に該当すると思われる。

コドリやゴーストップ(韓国のゲーム)は、第1類であろう。

そこで皆さんにお願いなのは、第4類のゲームで分かるのがあったり、

これは第2類に加えるべきだ、と言うのがあったり、近所のお年寄りが

よく分からないゲームをしている、なんてのがあったら、

ご一報を願いたいということである。

よろしく!