雙六手引抄7

№7  (←クリックすると底本画像が表示されます)

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○_____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x_____○ 

○○○○●_x_____○ 

内 外 

▲重(しゆ)三をばわりて入へし四六 

をはより入るへしはしりぬ 

ればてき 

高目(たかめ)の時 

われかた 

六をうた 

されは 

まくる也 

さいわろ 

くてあた 

らはわれ 

もおり 

むかうへし 

[解説]

№6にも共通する用語として「かた×」がある。「かた一」(№6)、「かた六」(№7)のように使うが、「片一」「片六」であって、

意味は片方の目に×が出たロールということであろう。現代で言うなら「一がらみ」「六がらみ」と言うところであろうが、日本語としてよく分かる用語である。 

余談だが、私はゲームの用語もそれぞれの母語で表現すべきと考えている。しかもバックギャモンの場合は、盤雙六という伝統のあるゲームがあったのだから、

同じことなら固有の用語を使うべきなのではないだろうか。つまり、私がここで用語を解析しているのは、単にその意味を追うだけにとどまらず、

むしろそちらの用語を使うことで、伝統とつながろうという意図があるわけだ。尤もこれもなかなか難しい問題もあって、実は簡単にはいかないのを知ってはいる。

しかしそれでも、例えば「ダンスした」と言うより、「淀んだ」と言った方が、味わい深いのではないだろうか。 

この問題はのちにまた検討したい。 

おろす…№6ではエンターの意味で使っているようだ。 

はしる…№7では一気に進むという意味で使っているようである。これは現在でも使う普通の感覚だが、問題があるかも知れない。 

高目…大きい目ということであろう。 

おりむかう…№3にも出てきたが、リターンヒットするという限定的な意味かも知れないし、反撃するというようなもう少し大雑把な意味かも知れない。 

あたる…ヒットされる。 [かける⇔あたる] の対立があるのかもしれないし、そんな厳密には使っていないのかも知れない。

№7で面白いのは、重三 と書いて「しゅさん」と読める振り仮名を振っているということだ。33は有名な玄宗皇帝と楊貴妃の故事から「朱三」と書いて

「しゅさん」と読むことになっている。しかしここでは朱三と書かず、あえて重三と書き、それに「てうさん」ではなく「しゆ(さん)」と振っている。

№7 解答図① 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○_____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x______ 

○○○○●○x_____○ 

内 外 

原文:▲重(しゆ)三をばわりて入へし四六をはより入るへしはしりぬ ればてき高目(たかめ)の時われかた六をうたされはまくる也さいわろくてあたらはわれもおりむかうへし 

№7 参考図① 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○_____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x__○___ 

○○○○●_x__○___ 

内 外 

ここの文章はなかなか難しい。文章がどこで切れるかが分からないので、解釈が分かれそうだ。木板印刷では、文や節や単語の分かれ目で

軽い分かち書きをすることもあるが、曖昧でどちらともとれることが多い。また点を打っているように見えるところもあるが、印刷や複写の汚れともとれ、判然としない。 

まず冒頭の▲の意味が分からない。ただしこれは他の箇所にも出てくるので、おいおい判明するのかも知れない。頭に置いておこう。 

それでも前半の33の部分は分かりやすい。参考図①のようにしたくなるだろうが、それでは敵に大きい目(と言っても30通りもある)を振られたら負けてしまうので、

解答図のように割れ(スプリットしろ)と言っているわけだ。参考図で白は49ピップ、黒は47ピップで黒の振り番だから、黒に平均かそれ以上の目を出されると負けそうである。

とは言え差は2ピップ、黒に44もあるわけだし、6通り程度とは言え小さい目もあるので、私などは参考図でも一法と思ってしまうがどうだろうか。 

参考図から、互いに平均の目(7)を振り続けると想定した場合、確かに1ロール差前後で黒が勝つ。互いに66を振り続けると想定しても同様である。

しかし実際にロールアウトしてみると、白の勝率も悪くない。要するに僅差であり、参考図は間違いというほどではないと思うのだがどうだろうか。

№7 解答図② (64を振った場合) 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○_____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x______ 

○○○○●○x_○____ 

内 外 

№7 参考図2 (64を振った場合) 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○○____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x______ 

○○○○●_x_____○ 

内 外 

原文:▲重(しゆ)三をばわりて入へし四六をはより入るへしはしりぬ ればてき高目(たかめ)の時われかた六をうたされはまくる也

さいわろくてあたらはわれもおりむかうへし 

直訳:重三をば、割りて入るべし。四六をば、寄り入るべし。走りぬれば、敵高目の時、我片六をうたざれば負くる也。

賽悪ろくして当たらば、我も下り向かうべし。 

意訳:33はスプリットして入る。64は1つ寄り、1つ入れる。走ってしまうと、敵に大きい目が出たときこちらが6がらみを振らないと負けてしまう。

目が悪くて(相手に良くて)ヒットされても、リターンヒットを狙えばよい。

「意訳」の解釈で合っているのだろうか。もちろんそう思って訳してはいるが、盤石の自信がある言う訳ではない。 

33は、手前外一地から外四地へ2つとも寄せてもそう勝率が悪いわけではなさそうだ。わざわざ割らなくてもよいとも感じる。

黒には44という逆ジョーカーもあることだし。しかしわずかだが負けているのも確かなので、書いてあることも嘘とは言えない。

ぞろ目のない盤双六では、僅差でも逆転するのはなかなか大変だ。 

64も同様で、こちらはもっとピップ差が小さい。(33は6ピップだが、64は10ピップもある。) 私は参考図の方がよいような気がするがどうだろうか。

[コメント]

M:33(12/9(2))、64(12/2)がいいと思います。ぞろ目がないだけでベアオフの上がり方はいっしょなのであれば、

このように寄っている形ではロール数がすべてで、ピップ差は関係ないはず。

33のあと、白は17クロスオーバー必要で9ロールで上がれそうです。黒は理論上18クロスオーバーですが、

実際には1回はミスると思うので10ロールかかるほうが普通な気がします。ショットを残して12,13,11など小さい目でヒットされてしまうのはひどすぎです。

草:これは参考図の方がよいということですよね。同感です。 

№7  参考図2 (64を振った場合) 再掲

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●●___x______ 

●●____x______ 

1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1 

______x______ 

○_____x______ 

○○○○__x______ 

○○○○__x_____○ 

○○○○●_x_____○ 

内 外 

▲重(しゆ)三をばわりて入へし四六をはより入るへしはしりぬればてき高目(たかめ)の時われかた六をうたされはまくる也 

さいわろくてあたらはわれもおりむかうへし 

こんなに無理する必要はないでしょう。切られても当て返せる保証はないですし。

M:しかし、1pなど、ローポイントにお互いすべて寄ったベアオフは絶対に逆転しないわけで、それは全然面白くないですよね。

というか、投了になりますね。そういうルールだったのかなあ。

草:私はそのように思います。つまり盤双六の終盤は逆転がないので、かなり早い時期に投了したのでしょう。

そこが拡大解釈されて、先にインナーに入れきったら勝ち(入り勝ち)とされたのだと思います。

しかし、恐らく「入り勝ち」は現代的な意味でのルールでなく、恐らく「相手がインナーに入れきったら投了するのが原則」という意味なのだと思います。

つまり明確な逆転の目があれば投了は取りやめて続けられるということで、雙六錦嚢抄にはそういう図 (インナーに全て入れても続けるととれる図) もあります。 

この「入り勝ち」を厳密な意味のルールととると、現在の白河のルールのようにあまり面白くなくなってしまいます。

しかしそこに「蒸し勝ち」ルールを入れると、別の面白さが生まれるというのが、ブレーヤーとしての私の見解です。