雙六手引抄9
№9 (←クリックすると底本画像が表示されます)
_●●●●●x______
_●●●●●x______
_●_●●●x______
______x______
______x______
1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1
______x______
______x______
○○○___x______
○○○__○x○_○___
○○○●_○x○_○___
内 外
▲五三するへしつくりぬれ
ば目は一めあきなれとも
ふたはに
あたる
なり
すりぬ
れは二め
あけとも
一(ひと)はに
あたる
なり
[解説]
まず語句からいくと、「する」とはいわゆる「ひき逃げ」を意味するらしい。「つくろ」は文字通りポイントを作ることで、
これは現代でも英語でもつくる(メイク)である。「ふたは」は前述>45の注の右側、すなわち「二つのブロット」を意味している。
ここではほかに難しい単語はない。
№9 解答図
_●●●●●x______
_●●●●●x______
_●_●●●x______
______x______
______x______
1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1
______x______
○_____x______
○○○___x______
○○○__○x○_____
○○○__○x○_○___ 手石●
内 外
原文:▲五三するへしつくりぬれば目は一めあきなれともふたはにあたるなり すりぬれは二めあけとも一(ひと)はにあたるなり
直訳:五三するべし。作りぬれば、目は一目空きなれどもふた端に当たるなり。すりぬれは二目空けどもひと端に当たるなり。
意訳:五三はひき逃げるべき。つくると、一カ所空きだが二つのブロットに当たる。ひき逃げれば二カ所空きだが、ブロット一つにしか当たらない。
№9 参考図①
_●●●●●x______
_●●●●●x______
_●_●●●x______
______x______
______x______
1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1
______x______
______x______
○○○___x______
○○○○_○x______
○○○○_○x○_○___ 手石●
内 外
解答図はインナーに二つギャップがあるが、ブロットは一つだ。参考図はインナーは一カ所しかあいていないが、ブロットは二つある。
私の第一感では参考図だ。あなたらどうプレイする?
№9 参考図②
_●●●●●x______
_●●●●●x______
_●_●●●x______
______x______
______x______
1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1
______x______
○○____x______
○○○___x______
○○○___x○_○___
○○○●__x○_○___
内 外
№9問題図の局面を少し分析すると、ピップでは白が勝っている。差は黒の残されたバックマン程度だろうから小さくはない。
しかしクロスオーバーで数えると、白はその外陣(アウター)に4つも残っているのは重い。
内陣(インナー)を見ると、これは一目空きしかも一地の黒が、二目空きしかも四地・五地の白より圧倒的に堅い。つまりここで白は打たれたくない。
そこを考えると、53のチョイスはもう一つ(当面)セイフティープレーがある。参考図②がそれだが、これはギャモンプレーヤーは選ばないだろう。
これは次に黒に何六の大きい目を振られて逃げられると、ピップでは確かに勝っていても外陣に四つ残るので、
ロール数としては決して勝っているとは言えないだろう。逆に小さい目(特に「一三にてつくりぬれば」)では、白にとって相当寒い形で悪い目がたくさんあり、
打たれれば蒸し負けである。(この時代は蒸しのルールはないようだが。)
で、素直にショット数を数えてみると、参考図①の方は52・25と54・45の4通り、9回に1回である。
一方解答図の方は面白いことに54・45の2通り18回に1回しかない。外四地がバーから丁度9ピップというのが、ミソである。
これは確かに面白い。第一感に反して、参考図①より解答図の方が打たれにくいのである。
だが、それは本当だろうか。ギャモン勝ちのないルールではあるが、後のことを考えるとそれでも参考図①の方がよいような気がするが、どうだろうか?
試しにエクストリームギャモンで局面解析をしてみてもらった。盤双六にはギャモンもキューブもないのだが、設定を1ポイントマッチにすれば問題ない。
すると僅差で参考図①の方が良いと出た。(数値は失念したので、あとでもう一度聞いて追記します。) では双六手引抄は誤っているのだろうか。私はそうは思わない。
雙六はぞろ目は2度ムーヴであり、4度ではない。解答図を選んだ場合で、次に黒が44を振ったとしてみよう。(55は参考図①と同じになるので、比較には必要ない。
他のぞろ目は出られない。) すると盤双六では参考図③の下の●の位置に出ることになる。(内陣に居座るのも可能だが。) もしこれがバックギャモンだったら、
▲の位置になる。これは確かに大きな違いで、エクススリームギャモンはここを評価したのだと推定できる。ぞろ目のない盤双六では、この●の後、黒が白に振り勝つのは相当に難しい。
№9 参考図③ (白が解答図の手を選び、次に黒が44を振った場合)
_●●●●●x__▲___
_●●●●●x______
_●_●●●x______
______x______
______x______
1 2 3 4 5 6 6 5 4 3 2 1
______x______
○_____x______
○○○___x______
○○○__○x○_____
○○○__○x○●○___
内 外
以上、私なりの結論を出すと、これは解答図が正しい。しかも一見感覚に反する なかなかよい問題と言える。二目空きが一目空きより安全とは!
すなわち今から340年前に、日本の(広義の)バックギャモンのレベルは、既にそれなりの技量に達していたと見るべきであろう。
更に補強すると、ぞろ目が(4度ムーヴで)ないということは、多少悪形にしてもぞろ目クラッシュがないということで、小さいがこれも解答図を推す材料になろう。